デンターシステマを使ったレコードクリーニング方法

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時の経過を感じつつプチプチ音の入ったレコードを楽しむのもよいですが、徹底してノイズを排除しクリアな音溝を針でトレースさせたい欲望は捨てきれません。
今回は水洗いでも落としきれなかったチリノイズを極限まで除去する方法を検証します。

前回までのおさらい
・激落ちくんの検証 水の「激落ちくん」でレコードを洗うと確実に汚れは落ちる
・水洗い方法 レコードの洗浄・メンテナンス方法

始めに、水洗いでは除去出来なかったノイズの原因を考えてみます。

・水道水の成分がレコード盤に固着しているのではいか。
・拭き取り用ガーゼに付着したチリ、または繊維が盤面に移ってしまったのではいか。
・溝の中にあるチリはスポンジでは落としきれないのではないか。
・洗浄後の水切りの際、レーベルステッカーの紙の繊維が溶け出して溝に入ってしまったのではないか。

以上の原因を考えました。
また、激落ちくんの拭き取りの際、茶色に変色した汚れはタバコのヤニではないかと考えています。タバコのヤニが付着しているレコードと非喫煙環境でのレコードではクリーニングの結果が変ってしまうかもしれません。今回も激落ちくんを使ってこれらの疑念をできるだけ排除することにします。

準備その1 歯ブラシを使ってマイブラシを作る。

まずは溝内部の汚れにメスを入れるため、マイブラシを制作するすることから始めました。
ネット上でデンターシステマが使えるという記事をいくつか見かけたので歯ブラシのヘッド部分を連結してブラシを作ります。

参考にさせていただいたサイト
バーボンのおつまみ:レコード・クリーナー “microgroove cleaner”

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準備したもの
・はんこ用のアクリル板 425円
・デンターシステマ 5本 890円
・3M 超強力両面テープ 680円
*切断用カッター(ニッパーでも切れるようです)
デンターシステマはレコードの音溝より細い0.02mm。これで溝の中の汚れをかき出せるはずです。

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ノコギリカッターでヘッドを切断しているところ。何故か残酷なことをしているような気分になります。

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両面テープを使って1個ずつ接着します。

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完成!手前にスペースを設けて持ち易くしました。これで溝の内部のチリをかき出します。

準備その2 精製水を用意する。

水道水の不純物がノイズの原因となっている可能性も捨てきれません。不純物を極力排除するため精製水を用意しました。

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ドラッグストアなどで売られている精製水。盤面に噴射しやすいようスプレーボトルも購入しました。

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念入りに共洗いまでしてしまうのは職業柄でしょうか。本職の手さばきです。

準備その3 洗浄用ターンテーブルを用意する。

マイブラシでしっかり溝をトレースさせるため、専用のターンテーブルを調達しました。またターンテーブルを使った洗浄の場合、レーベル面を濡らさないためチリや繊維が流れ出している可能性も排除することができます。

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リサイクルショップで500円で購入。一部破損などがありますが通常のプレイヤーとして再生できたのにはビックリです。

いよいよ洗浄します!

洗浄開始です。
1.レコードに激落ちくんを噴射して、マイブラシで10〜20回程度回します。
2.ガーゼで拭き取ります(激落ちくん拭き取り専用ガーゼ)。
3.マイブラシを精製水で洗います(激落ちくんの残留成分、チリを洗い出す)。
4.レコードに精製水を噴射して、マイブラシで10〜20回程度回します。
5.精製水専用ガーゼで拭き取ります。
6.4〜5の作業を2〜3回繰り返します。
7.完了!

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果たして効果のほどは?

ガーゼを使用しての作業となったため不安材料は残りましたが、水洗いでは取り除けなかったノイズを除去することが出来ました。数枚のレコードで試しましたが一度のノイズもなく再生できたものもあります。多少手間がかかるのが難点ですが、低コストで極限までノイズを除去したい場合は有効な手段になると思います。また市販のバキュームクリーナーを使えばガーゼを使う事無く残留成分を除去できますが高価なのがネックです。個人的には水洗いでノイズの取れなかったレコードや少しでもノイズを除去したいレコードは上記の方法で洗浄しようと思います。
以上レコード研究室からの報告でした。

*実際に試される場合は自己責任でおねがいしますm(_ _)m

モータウンの町

今月の18日、デトロイト市が破綻した。社会情勢やグローバル化という言葉に疎い僕は、どんな波紋が広がるのか伺い知ることさえ容易ではない。

デトロイトで真っ先に思いつくものはレコードレーベルの「モータウン」である。スティービー・ワンダーやジャクソン・5といったアーティストの顔ぶれや、デトロイト・テクノといったサウンドを連想してしまう音楽ファンである。特に60年〜70年代のモータウンは底抜けの明るさと印象的なフレーズが散りばめられた作品が連なり、一度聞いたら頭から離れなくなる。例えアーティストの名前や曲名を知らずとも、モータウンの音楽が流れ出せば何処かで聞いたことのある音楽として記憶の片隅から呼び起こされることだろう。

デトロイトが最大の人口を記録した1950年代。一般的にはGM(ゼネラルモーターズ)の町として知られている。同じ時期、GMは年10億ドル以上を稼ぎ出すアメリカ初の企業となった。「モータウン」とはレコードレーベルとしか思っていなかったが、デトロイトの通称である。モーター・タウン、つまりモータウンということを先ほどWikipediaで知った。

一方、僕の生まれ育った町と言えば家電メーカーでおなじみの日立市。「Hitachi」はモーターの開発がきっかけとなり日立製作所を設立。駅周辺にはモーター最中や扇風機最中を販売する和菓子店がありお土産としても重宝されている。日立市は国産のモータウンとも言えなくもない。地元ではニッセイ(日製)の呼び名で親しまれているが、バブル崩壊後に経営が悪化。当時僕は高校3年生で日立工業高校の就職先と言えば、日製というのが決まり文句のようになっていた。しかしこの年の募集はたった1〜2名だったことを覚えている。希望に溢れる町の空気が急速に変化しているのを若年ではあるが肌で感じていた。

デトロイトのニュースに端を発し、黄金期のモータウンに思いふけていると、いつしか自分の住む町の雰囲気と交錯し複雑な心境になる。 かつてあったであろう人々の活気や希望、そして期待。 後戻りする事はないであろう当時の面影は、儚くもノスタルジックな気分に襲われてしまうのである。

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7月13日、Light Outで行われたGood Groove当日。 直前にはDigtiと一緒に水戸のレコードショップ、バイニール・マシンにいた。遠方の方でもブラッミュージックファンならご存知の方がいるかもしれない。店内のレコードを眺めているとDigtiがスティービー・ワンダーのMy Cherie Amour探していたことを思い出し、レコード棚から取り出した(僕は学生の頃から通っているので何処に何があるのかもなんとなく把握している)。1969年発売のオリジナル盤である。段ボールを圧縮したような米盤特有の紙素材。厚塗りのインクにコントラストが強いプリント。若干のウエアリングはあるが40年以上前の印刷技術で出力された状態をはっきり見て取れる。当時の情報源と言えばラジオが主たるメディアであり、モータウンは家庭用のラジオやカーステレオを通して最適な音質となるようマスタリング〜プレスされていたと言う話しもあるが、まさに当時制作された現物である。

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当時のインナースリーブは、レーベル作品のリストや広告枠としても利用されていた。 My Cherie AmourのインナースリーブにはMOTOWN FAN BAGのお知らせがプリントされている。 今もバックの現物を持っている方はいるのだろうか。。。 クーポン枠の「DON’T DELAY, ORDER TODAY!」の文字に視線が移ると、まるで先日出来たばかりのレコードを手にしているように思えてしまう。

レコードとは日本語にすれば「記録」である。
それは「音」そのものだけでなく、制作当時の環境や営みの断片までもが記録されている。最近はiTunesなどで聴きたい音楽を即座にダウンロードし楽しんでしまうこともあるが、やはりオリジナル盤には代え難い輝きがあるのもまた事実だ。

My Cherie Amourから聴こえてくるメロディーは、デトロイトの自動車産業がもたらした活気と、豊な人々の息吹をスティービー・ワンダーが代弁しているかのように僕の心に響き渡るのである。

水の「激落ちくん」でレコードを洗うと確実に汚れは落ちる

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誰しもが予測できるであろう当たり前のタイトルを付けてしまいました。結論から言えば水の「激落ちくん」でレコードを洗うと確実に汚れは落ちますが、はたして音質面での効果があるのかどうか気になるところです。

今回は同じLPを2枚使って比較検証します。
(基本的な洗浄手順は過去記事レコードの洗浄・メンテナンス方法を参照ください)
音源はリサイクルショップで長らく眠っていたであろうユーミンのミスリム。ブレイク物として海外でも人気のあるレコードです。

【テストその①】 1枚目 洗浄前の音源
【テストその②】 1枚目 水洗い(中性洗剤)後の音源
【テストその③】 2枚目 洗浄前の音源
【テストその④】 2枚目 水洗い(中性洗剤)+激激落ちくんで洗浄した音源

以上、4つを録音し比較試聴します。
*ヘッドフォン推奨です

【テストその①】 1枚目 洗浄前の音源
冒頭のドラムブレイクがカッコイイですがノイズに埋もれ気味です。溝に溜まったゴミを拾って再生しているのが確認できます。


【テストその②】 1枚目 水洗い(中性洗剤)後の音源
「テストその①」のレコードを中性洗剤で洗い、乾燥させてから再生したものがこちらです。S/N比が良くなって先ほどの状態が随分汚れていたことが分かります。リバーブなどの処理、音全体の見通しも良く見えるようになりました。チリノイズも幾分軽減された気がしますが、完全には除去されませんでした。


【テストその③】 2枚目 洗浄前の音源
続いて2枚目のLP。いわゆる中古盤なので多少のチリノイズはありますが、1枚目のものより汚れは少ないようでクリアな音質です。もしかすると先日まとめて洗浄したレコードかもしれません。


【テストその④】 2枚目 水洗い(中性洗剤)+激落ちくんで洗浄した音源
いよいよ検証音源です。うーん。静寂が増してしっとり粒立ちがよくなった気がしないでもないですがプラシーボ効果のような気もします。。。はっきりした違いを期待していただけに腑に落ちない結果となりました。

【結論】
水洗いと比較してはっきりとした違いは確認できませんでした。高品位なオーディオ環境で比較試聴すればまた違った世界が見えてくるのかもしれません。
特に期待していたのがノイズへの効果ですが、今回使用したレコードは状態があまりよくなかったこと(共にVG-〜VG+程度)、洗浄後に使用したガーゼが微細なホコリを付着させてしまった可能性などがあり、激落ちくんそのものの検証を難しくする要因となってしまいました。

一方で直接レコードに噴射してみると目に見える効果がありました。拭きとったガーゼが茶色に変色するほど汚れが落ちます。洗浄済みのレコードであっても同様の効果がありました。激落ちくんは中性洗剤でも落としきれなかった微細な汚れを浮き上がらせることが出来るようです。
ただしそのまま放置してしまうと盤面に水垢のような白い拭き残しが出来てしまいます。

公式ページのQ&Aにアルカリ電解水は空気中の二酸化炭素と反応し炭酸ナトリウムの結晶(粉末)を作ってしまうとあるので、これがレコードの盤面に残ってしまったのだと思います。激落ちくんでレコードをクリーニングする場合は最後に水洗いしたほうが良さそうです。

以上の結果から推測すると、
① レコードを水洗い(中性洗剤)して乾燥させる
② レコードに激落ちくんを噴射しガーゼで拭き取る
③ 再度レコードを水洗いする
という手順がベストアンサーではないかと思われます。
こちらは後日検証してみます。

【あらためて結論】
水の「激落ちくん」でレコードを洗うと確実に汚れは落ちる。